断熱の打合せに入ると、「充填断熱」と「外張り断熱」という2つの言葉が出てきます。断熱材の種類の話だと思っていると、実はそれ以前の、断熱材をどこに入れるかという工法の話であることに気づきます。
この記事では、充填断熱がどういう工法なのかを整理したうえで、外張り断熱との違いを、断熱材・気密の取り方・結露対策・施工上の注意という4つの面から解説します。どちらが優れているという結論ではなく、それぞれで何に気をつける必要があるのかを見ていきます。
- 充填断熱は、柱や間柱、梁など軸組の間の空隙に断熱材を施工する工法
- 外張り断熱は、軸組の外側に断熱材を施工する工法で、使う断熱材も気密の取り方も異なる
- 充填断熱では、断熱材の室内側に防湿層、外側に通気層と防風層を設けることが内部結露対策になる
- 充填断熱のメリットは壁が厚くならないこと・費用を抑えやすいこと、デメリットは壁厚以上の断熱ができないこと・柱や梁から熱が逃げやすいこと
- 充填断熱は壁厚以上の断熱ができないため、性能を高める方法として付加断熱がある
- 断熱等性能等級は外皮平均熱貫流率などの数値で判定されるため、工法によって取れる等級が決まるわけではない
- どちらの工法でも、隙間なく施工することと気流止めを設けることが性能を左右する
充填断熱とは

断熱工法は大別すると充填断熱工法と外張り断熱工法があり、その2つを組み合わせる場合もあります。まずは充填断熱がどういう工法なのかを確認します。
軸組の間の空隙に断熱材を入れる
国土交通省の資料では、充填断熱工法を「壁内の柱・間柱、梁など軸組み間の空隙に断熱材を施工する工法」と説明しています。柱と柱の間の空間を断熱材で埋めていく形です。
木造軸組構法では柱の間に空間があるため、そこを使えば壁の厚みを増やさずに断熱層を確保できます。日本の戸建て住宅で広く採用されてきた工法です。
施工方法は4つに分かれる
同じ充填断熱でも、断熱材の入れ方によって、はめ込み工法、敷き込み工法、吹付け工法、吹込み工法に分かれます。はめ込み工法は壁・屋根・天井(梁間)・床、敷き込み工法は天井、吹込み工法は壁・屋根・天井・床、吹付け工法は壁・屋根・床に主に施工されます。
断熱材としては主に繊維系断熱材が用いられますが、保管時や施工時の水濡れには注意が必要です。湿気を含むと断熱性能が低下するためです。発泡プラスチック系断熱材のボード状のものを用いる場合は、隙間を生じさせないことが求められます。
主に使う断熱材
充填断熱で使う断熱材は、施工方法とあわせて選びます。代表的なものは次のとおりです。
- グラスウール・ロックウール:繊維系の断熱材。マット状のものを柱の間にはめ込む
- セルロースファイバー:古紙などを原料にした繊維系の断熱材。専用の機械で壁や天井に吹き込む
- 硬質ウレタンフォーム:発泡プラスチック系の断熱材。現場で壁や屋根に吹き付ける
- ボード状の発泡プラスチック系断熱材:柱の間の寸法に合わせて切ってはめ込む
繊維系断熱材は水濡れと湿気に、ボード状のものは隙間に、それぞれ注意が必要なことは前の項目で触れたとおりです。
充填断熱と外張り断熱との違い

外張り断熱工法は、柱・間柱、梁など軸組の外側に断熱材を施工する工法です。断熱材を入れる位置が違うだけに見えて、気密の取り方も結露対策も変わってきます。
| 項目 | 充填断熱工法 | 外張り断熱工法 |
|---|---|---|
| 断熱材の位置 | 軸組の間の空隙 | 軸組の外側 |
| 主に使う断熱材 | 繊維系断熱材 | 発泡プラスチック系断熱材(ボード状) |
| 気密化の方法 | 防湿材や気密材で構成される気密層を施工する | ボード状の断熱材自体を気密材として使える。ボード間などの目地処理が必要 |
| 防湿フィルム | 断熱材の室内側に施工が必要 | 発泡プラスチック系断熱材を用いる場合は不要 |
| 壁の厚み | 壁厚以上の断熱はできない | 外側に壁厚が増す |
| 配線・配管 | 断熱層を貫通するため、断熱欠損や気密層の穴に注意 | 壁内が空洞のままのため容易 |
気密の取り方
充填断熱では、断熱材を入れるだけでなく、防湿材や気密材などで構成される気密層を別に施工しなければなりません。一方の外張り断熱では、発泡プラスチック系断熱材のボード自体が空気を通しにくいため、気密材として用いることができます。ただしボード間やその他の材料との間の目地処理は必要です。
つまり、充填断熱では気密層をつくる工程が別に入り、外張り断熱では断熱材の張り方と目地処理が気密性能に直結する、という違いになります。
結露対策
充填断熱で主に用いられる繊維系断熱材は水蒸気を通しやすいため、水蒸気が侵入しないように、断熱材の室内側に防湿層として防湿フィルムの施工が必要です。同時に、断熱材の外側には、水蒸気を外気に排出しやすくするための通気層と防風層の施工が必要になります。
外張り断熱で発泡プラスチック系断熱材のボードを用いる場合は、断熱材が水蒸気を通しにくいため、防湿フィルムの施工は不要です。ただし外気側は、断熱材と外装材の間に水蒸気が滞留しないように通気層が必要になります。
施工上の注意点
充填断熱では、空隙に断熱材を充填する工法であるため、柱や間柱等との間に隙間が生じないようにすること、施工後に断熱材が自重等により垂れ下がって落下しないように固定することが求められます。また、断熱壁に電気配線やコンセント・スイッチボックス類を施工する際に、断熱欠損や防湿層・気密層に穴を開けないよう注意が必要です。
外張り断熱では、外装材の重量を考慮して釘やビス等の選定と留め付け間隔に留意する必要があり、外側に壁厚が増すためサッシ固定枠を壁外側に別途設けなければなりません。狭小敷地では壁厚が増すこと自体が制約になり、建築基準法上の外壁の後退規制にかからないよう注意が要ります。
充填断熱のメリット
充填断熱を選ぶ場合のメリットを整理します。
壁が厚くならず、敷地を有効に使える
充填断熱の利点は、もともとある軸組の間の空間を断熱層として使える点です。外側に壁厚が増さないため、敷地に余裕がない場合でも計画しやすく、外壁の納まりも一般的なものになります。サッシの固定枠を外側に別途設ける必要もありません。
外張り断熱より費用を抑えやすい
外張り断熱では、外装材の重さに合わせて釘やビスを選び、サッシの固定枠を壁の外側に別に設ける必要があります。充填断熱は軸組の間に断熱材を入れるので、こうした部材と手間がかからず、外張り断熱より費用を抑えやすい工法です。
ただし、費用は断熱材の種類と厚み、求める断熱等級によって大きく変わります。工法の名前だけで比べず、同じ断熱等級の見積もりどうしで比べてください。
部位ごとに施工方法を選べる
施工方法の選択肢が多いことも利点です。はめ込み、敷き込み、吹付け、吹込みのそれぞれに向く部位があり、部位ごとに使い分けられます。
充填断熱のデメリットと注意点
充填断熱を選ぶ場合のデメリットと、施工のときに気をつけたい点を整理します。
壁の厚み以上には断熱できない
制約になるのは、断熱層の厚みが軸組の寸法に縛られる点です。柱の見付け寸法を超える厚みの断熱材は入りません。断熱性能をさらに高めたい場合は、次の項目で触れる付加断熱を併用することになります。
柱や梁の部分から熱が逃げやすい
柱や梁などの木材は、断熱材に比べると熱を通しやすい材料です。充填断熱では柱や梁のところで断熱層が途切れるため、この部分から熱が逃げやすくなります。このように、まわりより熱が通りやすい部分を熱橋(ねっきょう)といいます。
外張り断熱は軸組の外側を断熱材で切れ目なく覆うため、この影響を受けにくい工法です。充填断熱で気になる場合は、外側に断熱層を足す付加断熱で補えます。
気密層と防湿層を別につくる必要がある
充填断熱では、断熱材を入れるだけでは気密がとれません。防湿フィルムなどで気密層・防湿層を別につくる工程が入り、電気配線やコンセントボックスのところで穴が開かないよう、施工の管理も求められます(くわしくは前の節の「気密の取り方」「結露対策」)。外張り断熱と比べると、手間と管理がかかる点は弱点です。
施工の精度が性能に直結する
国土交通省の資料では、断熱材相互や断熱材と構造部材との間に隙間があると、断熱層に外気や室内空気が侵入し、設計どおりの断熱性能が確保できないこと、表面結露や内装材の汚損、それに伴うカビ菌類の発生による空気質の悪化の原因にもなることが示されています。
隙間は、断熱材を現場で手作業で入れるときに生じやすくなります。たとえば下の左の図のように、筋かいの入った壁では、筋かいと柱がつくる鋭角の部分に断熱材が届きにくく、隙間ができやすくなります。


(図の出典:ヤマダホームズ公式サイト「DANパネル」)
隙間を減らす方法の1つが、断熱材を工場で組み込んでから現場に運ぶやり方です。ヤマダホームズの「DANパネル」は、自社工場で誤差1mm以下の基準でパネルを製作し、断熱材をあらかじめ組み込んでから現場に搬入することで、手作業で生じやすい断熱材と構造躯体の隙間を抑えています(断熱等級6・UA値0.39相当)。DANパネルの対象商品はRASIO(ラシオ)です。
あわせて重要なのが気流止めです。木造軸組構法の外壁および間仕切り壁の上下端部では、壁の内部空間が床下や小屋裏に通じた納まりになることが多く、そのままにすると外気が床下から壁内に入り小屋裏へ抜ける気流の経路ができます。この気流は壁の断熱性能を低下させるため、防湿フィルムや乾燥木材など通気性の低い材料を壁上下端部の取合い部に設置して気流の発生を防ぐことが求められます。この材料を気流止めといい、告示にも定められています。
断熱性能を高める付加断熱
充填断熱と外張り断熱は、どちらか一方を選ぶものとは限りません。組み合わせるという方法もあります。
充填断熱に外張り断熱を併用する
国土交通省の資料では、充填断熱に躯体の外側から断熱する外張り断熱を併用した断熱工法を付加断熱工法と呼んでいます。充填断熱で壁厚以上の断熱ができないという制約を、外側に断熱層を足すことで解消する考え方です。
壁の断面が厚くなりますので、敷地条件や外観の納まりへの影響は出ます。断熱性能をどこまで求めるかと、その制約を受け入れられるかを、地域の気候と合わせて判断することになります。
等級は工法ではなく数値で決まる
断熱等性能等級は、外皮平均熱貫流率と冷房期の平均日射熱取得率の小ささ、および壁体内等の結露の発生を防止するために必要な対策の程度によって評価されます。評価されるのは数値と対策の内容であり、工法の名前によって等級が決まるわけではありません。
| 等級 | 外皮平均熱貫流率(W/(平方メートル・K)) |
|---|---|
| 7 | 0.26以下 |
| 6 | 0.46以下 |
| 5 | 0.60以下 |
| 4 | 0.87以下 |
| 3 | 1.54以下 |
基準値は地域の区分によって異なりますので、建築地がどの区分にあたるかを確認したうえで数値を見てください。なお、2025年4月からは原則としてすべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられています。省エネ基準に適合する住宅は、評価方法基準の上では断熱等性能等級4の基準に適合しているものとみなされますので、現在の新築住宅は等級4が出発点になります。
部位ごとの断熱方法とあわせて考える
壁をどちらの工法にするかと、床下や基礎をどう断熱するかは、別の判断になります。基礎の断熱方法には外断熱・内断熱・両面断熱があり、それぞれの上物には充填断熱工法と外張り断熱工法のいずれも用いられます。
断熱層や気流止めは、完成すると壁の中に隠れてしまう部分です。ヤマダホームズでは、全国の住宅展示場で断熱と気密の考え方をご案内していますので、実物を見ながらご相談ください。

よくある質問
- 充填断熱と外張り断熱はどちらが高性能ですか
-
工法の名前では決まりません。断熱性能は外皮平均熱貫流率という数値で評価されますので、比較するなら工法ではなくこの数値を確認してください。断熱材の種類と厚み、開口部の性能、施工の精度がそろって数値が決まります。検討している住宅会社に、その仕様での外皮平均熱貫流率を出してもらうと比較しやすくなります。
- 充填断熱は壁の中で結露しやすいというのは本当ですか
-
繊維系断熱材は水蒸気を通しやすいため、防湿層と通気層を適切に施工しなければ壁内で結露するおそれがあります。逆に言えば、断熱材の室内側に防湿層、外側に通気層と防風層を設ける断面が成立していれば対策された状態になります。採用する断熱材と、防湿層・通気層の納まりを図面で確認してください。
- コンセントの位置が断熱性能に影響しますか
-
影響することがあります。断熱壁に電気配線やコンセント、スイッチボックスを施工する際に、断熱欠損が生じたり防湿層・気密層に穴が開いたりしないよう注意が必要とされています。外壁面にコンセントを多く設ける場合は、その部分の納まりをどうするかを設計担当者に確認しておくとよいでしょう。
- 気流止めは必ず入っていますか
-
気流止めは告示に定められた措置ですが、壁の中に隠れるため完成後には確認できません。工事中であれば現場で見ることができますので、上棟後から断熱工事の時期に見学の機会があるかをあらかじめ担当者に聞いてみてください。あわせて、どの部位にどの材料で気流止めを設けているのかを施工要領で確認しておくと安心です。
まとめ
充填断熱は、柱や間柱、梁など軸組の間の空隙に断熱材を施工する工法です。軸組の外側に施工する外張り断熱工法とは、使う断熱材、気密の取り方、結露対策の考え方、施工上の注意点がそれぞれ異なります。充填断熱では防湿層・通気層・防風層を揃えること、外張り断熱では目地処理と留め付けが要点になります。
充填断熱は壁が厚くならず費用を抑えやすい一方、柱や梁の部分から熱が逃げやすく、気密層と防湿層を別につくる手間がかかります。また、壁厚以上の断熱ができないという制約がありますので、性能をさらに高めたい場合は外張り断熱を併用する付加断熱工法を検討することになります。断熱等性能等級は外皮平均熱貫流率などの数値で判定されますので、工法の名前ではなく数値と施工の中身で比較しましょう。どちらの工法でも、隙間なく施工することと、壁の上下端部に気流止めを設けることが性能を左右します。




