お子さまが独立し、これからの暮らし方を考え始めるタイミングで、住まいの見直しを検討されるご夫婦は少なくありません。二階建ての戸建てやマンションで過ごしてきた生活を振り返り、階段の上り下りや部屋数の多さが今の暮らしに合わなくなってきたと感じる場面も出てくるかもしれません。
この記事では、延床面積20坪(約66平方メートル)の平屋を例に、シニア夫婦二人が暮らしやすい間取りをどのように考えればよいかを、段差の少なさ・生活動線の短さ・水まわりの配置・将来の介助のしやすさという観点から解説します。
- 20坪(約66平方メートル)でも、夫婦二人分の生活動線と将来の介助のしやすさを両立した間取りは十分に成立する
- 段差をなくす・水まわりを集約する・生活動線を短くするという3つの視点で検討すると、間取りの失敗を防ぎやすい
- 将来の暮らし方の変化を見据えて、今のうちに間取りへ織り込んでおける工夫がある
20坪の平屋の広さと夫婦二人暮らしの目安

20坪と聞くと狭く感じるかもしれませんが、夫婦二人の暮らしを前提にすると見え方が変わります。どれくらいの広さなのかを、部屋の取り方と国が示す水準の両面から確認しておきます。
20坪でとれる部屋の組み合わせ
20坪は延床面積に換算すると、1坪が約3.3平方メートルにあたるため、20坪では約66平方メートルになります。子育て世代がゆとりある4LDKを希望する場合と比べると小さく感じるかもしれませんが、夫婦二人の暮らしを前提にすると、LDKと主寝室、水まわり、収納に加えて、来客用や趣味用の個室を1部屋確保できる広さです。
国が示す居住面積水準との比較
国土交通省が住生活基本計画で示している居住面積水準でも、2人世帯の最低居住面積水準は30平方メートル、戸建て住宅を想定した誘導居住面積水準(一般型)は75平方メートルとされており、都市部の共同住宅を想定した水準(都市居住型)は55平方メートルです。約66平方メートルとなる20坪の平屋は、この55平方メートルと75平方メートルのあいだに位置しており、夫婦二人が余裕を持って暮らす広さとして無理のない範囲だといえます。
老後の間取りに段差の少なさが求められる理由
老後の住まいで段差がたびたび話題になるのは、住宅内の事故が実際にそこで起きているからです。どこで何が起きているのかを押さえたうえで、間取りの段階で取り除いておけるものを見ていきます。
住宅内で転倒・転落が起きている場所
東京消防庁がまとめている高齢者の日常生活事故のデータによると、高齢者の「ころぶ」事故は住宅内で起こるものが最も多く、そのうち屋内での発生が9割以上を占めます。場所別では居室・寝室等がもっとも多く、次いで玄関・勝手口等、廊下・縁側・通路の順になっています。また「落ちる」事故は約8割が住宅内で発生しており、令和6年のデータでは、階段での事故による搬送者数が4,240人にのぼり、ベッド(976人)や椅子(328人)を大きく上回って最多となっています。
階段がないことで転落のリスクを減らせる
平屋は建物の構造上、階段そのものが存在しないため、階段での転落事故のリスクを間取りの時点で取り除けます。これは二階建てとの大きな違いです。あわせて、居室や玄関、廊下といった事故の起こりやすい場所の段差をなくしておくことが、老後の暮らしやすさに直結します。
段差をなくしておきたい場所と寸法の目安
住宅金融支援機構がフラット35の技術基準で示している高齢者等配慮対策の基準では、寝室のある階の居室や便所、浴室、洗面所、脱衣室について段差のない構造とすることが求められており、廊下の幅は78センチメートル(柱や建具枠のある部分は75センチメートル)以上、居室の出入口は内法75センチメートル以上を目安としています。将来手すりを設置する可能性がある場所には、建築時点で壁の下地を補強しておくと、後から取り付ける際の工事がしやすくなります。
- 玄関や勝手口の上がり框(かまち)の段差
- 浴室・洗面所・脱衣室の出入口の段差
- トイレの出入口の段差
- 居室と廊下のあいだの敷居の段差
玄関まわりと小上がりで気をつけたいこと
玄関まわりは特に段差が集中しやすい場所です。玄関の間取りや動線を考えるうえでのポイントもあわせて確認しておくと、後から手すりを付け足すような工事を減らせます。
なお、リビングやダイニングの一角に設ける小上がりは、収納スペースを確保しやすい一方で、段差による転倒のリスクが指摘されている間取りの一つです。取り入れる場合は、照明や手すりなどの安全対策とあわせて検討することをおすすめします。
生活動線を短くする部屋配置の考え方

毎日の移動の負担は、間取りが決まった時点でおおよそ決まります。平屋という建て方そのものが持つ利点と、そのうえでさらに動線を縮める配置の考え方を、分けて整理します。
上下移動をともなう動作がなくなる
平屋は生活のすべてが1つのフロアで完結するため、洗濯物を持って階段を上り下りしたり、就寝前に1階の戸締まりを確認してから2階に上がったりといった、上下移動をともなう動作そのものが発生しません。この点は、体力面での負担を減らしたいと考えるご夫婦にとって、間取り以前の構造的な利点といえます。
老後の住まい選びで後悔しやすいところ
二階建てからの住み替えやマンションでの暮らしを見直す形で平屋を検討する方も増えていますが、老後の住まい選びで後悔しやすいポイントとしてバリアフリー対応の遅れや将来の生活変化への備え不足が挙げられており、間取りを検討する初期の段階から老後を見据えた配置を考えておくことの重要性がうかがえます。
LDKを中心に寝室と水まわりを寄せる
具体的には、LDKを住まいの中心に据え、そこから主寝室・浴室・洗面・トイレへ短い距離でアクセスできるように配置する考え方が基本になります。寝室と水まわりの距離が近いほど、夜間にトイレへ向かう際の移動が短くて済み、将来的に介助が必要になった場合にも、介助する側・される側の双方の負担を抑えやすくなります。
浴室・トイレまわりで確認しておきたい点
水まわりは、いま安全に使えるかという視点と、将来介助が必要になったときに使えるかという視点の両方で見ておきたい場所です。
冬場の入浴で注意が呼びかけられている点
入浴中の事故は冬場に増える傾向があり、消費者庁は浴室や脱衣所を事前に暖めておくこと、湯温を41度以下・入浴時間の目安を10分程度にすること、浴槽から急に立ち上がらないこと、食後や飲酒後の入浴を避けること、入浴前に同居者へ一声かけることなどを注意点として挙げています。脱衣所と浴室の温度差を小さくしておく間取り上の工夫は、冬場の安全性に関わる部分です。
介助を見据えた浴室とトイレの余白
お風呂の種類やサイズの選び方を検討する際は、将来的に介助が必要になった場合の出入りのしやすさも視野に入れ、洗い場や出入口にゆとりのあるサイズを選んでおくと安心です。トイレについても、便器の左右や前方に手すりを設置できるだけの余裕を壁面に確保しておくと、必要になったタイミングで工事がしやすくなります。
収納配置と将来も使い続けられる部屋づくり
収納と個室は、いまの使い勝手だけで決めてしまうと、体力や暮らし方が変わったときに使いにくくなることがあります。長く同じように使えるかどうかを基準に考えます。
かがまずに出し入れできる高さにまとめる
収納は寝室や水まわりの近くにまとめておくと、日常の家事動線が短くなります。上下2段に分かれた収納よりも、腰を深くかがめずに出し入れできる高さの収納を中心に計画しておくと、将来にわたって使いやすさが変わりにくくなります。
個室の一つを和室にしておく
個室の一つを和室にしておくと、来客用の寝室や趣味の空間として使えるだけでなく、和室のメリットや間取りの工夫にあるように、畳のクッション性が万が一の転倒時の衝撃をやわらげる面もあります。お子さまやお孫さんが泊まりに来る際の部屋としても使い勝手のよい空間です。
20坪の平屋に見られる間取りの例
ここまでの考え方をふまえて、まず方向性の異なる2つの間取りのパターンを表で比較し、そのあとにヤマダホームズで実際に建てた20坪台の平屋を2件紹介します。表の2つのパターンは、どちらも延床面積20坪前後を想定しています。
| 比較項目 | パターンA(LDK+主寝室+和室+水まわり) | パターンB(LDK+主寝室+個室2部屋+水まわり) |
|---|---|---|
| 個室の使い方 | 和室を来客・多目的室として活用 | 趣味室と来客用個室を分けて確保 |
| 収納の考え方 | 寝室・水まわり近くに集約 | 各個室に分散して確保 |
| 向いている暮らし方 | 来客が多く、多目的に部屋を使いたい | 夫婦それぞれの居場所を分けたい |
水まわりを家の中ほどにまとめた平屋(2LDK・延床20.1坪)



2LDKの平屋です。玄関を家の中ほどに置き、洋室2室とLDKのあいだに浴室・洗面・トイレをまとめています。LDKは床と壁を白でそろえ、浴室には窓と浴室乾燥機を設けました。玄関には靴箱とは別にシューズクロークがあります。
- 延床面積:66.66㎡(20.1坪)
- 階数・間取り:平屋・2LDK
- 竣工:2019年3月
キッチンのまわりを回れる平屋(3LDK・延床29.9坪)



3LDKの平屋です。キッチンの横に通路を設けて洗面室とランドリールームへつなぎ、キッチンのまわりを回れるようにしました。リビングの隣の洋室は、引き戸を開ければリビングとひと続きに使えます。浴室は洗い場を広めにとっています。
- 延床面積:98.95㎡(29.9坪)
- 階数・間取り:平屋・3LDK
- 竣工:2021年7月
※本記事に掲載している事例は、2026年10月時点の「SUUMO」掲載情報を引用しています。
段差の少なさや水まわりの配置、収納の使い勝手は写真や図面だけでは伝わりにくい部分も多く、実際の空間で寸法や動線を確かめておくと検討しやすくなります。ヤマダホームズでは全国に住宅展示場をご用意しており、実際の建物をご覧いただきながら、シニア世代の暮らしに合わせた平屋の間取りについて担当者にご相談いただけます。

よくある質問
- 平屋は二人暮らしで防犯面が心配です。対策はありますか。
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居室がすべて1階にまとまるため、窓の配置や外構計画の段階から人の目が届きやすい配置を意識することが基本になります。センサーライトの設置や窓ガラスの防犯性能を高めるといった対策も、間取りとあわせて検討できます。
- 庭の手入れが負担にならないか心配です。
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芝生の面積を抑えて砂利や下草の植栽を組み合わせたり、駐車スペースや通路をコンクリートやタイルにして庭の面積自体を絞ったりすることで、手入れにかかる負担を抑えやすくなります。
- 将来、子ども世帯との同居や住み替えを考える場合、間取りは変更しやすいですか。
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建築時点で個室を可変性のある使い方ができるようにしておくと、後からの間取り変更がしやすくなります。対応できる範囲は建物の構造や仕様によって異なるため、検討段階で将来の使い方の希望をハウスメーカーに伝えておくとよいでしょう。
まとめ
20坪という広さは、夫婦二人の暮らしを前提にすると、水まわりと個室、収納をひととおり確保しながら、生活動線を短くまとめられる面積です。段差をなくす場所、動線を短くする配置、将来の介助を見据えた水まわりの余白は、それぞれ独立した検討項目であり、間取りの初期段階からひとつずつ確認しておくことで、暮らし始めてからの調整を減らせます。
実際の土地の形状や周辺環境によって、間取りの選択肢は変わってきます。気になる点があれば、間取りの具体案としてハウスメーカーに相談しながら検討を進めてみてください。



