外構の打ち合わせで「犬走り」という言葉が出てくることがあります。建物の外壁に沿って細長く設ける土間のことですが、図面では目立たない部分のため、必要かどうか判断しづらい項目です。
この部分は、外壁の汚れ方や基礎まわりの環境に関わり、設けるかどうかで、数年後の外壁の見た目や点検のしやすさが変わってきます。この記事では、犬走りの役割を整理したうえで、設けたほうがよい条件、素材ごとの違い、施工で押さえるべきポイント、手入れの考え方を順に解説します。
- 犬走りは外壁への泥はねを防ぎ、建物まわりを歩けるようにするための土間
- 建築基準法に犬走りの設置を義務づける規定はない
- 床下の換気孔は壁の長さ5メートル以下ごとに面積300平方センチメートル以上と定められている
- べた基礎の立上り部分の高さは地上部分で30センチメートル以上と告示で定められている
- 地面のレベルを上げると基礎の地上部分が浅くなるため、仕上がり高さの確認が要る
- 素材はコンクリート、砂利、ブロックやタイルで、費用と手入れの頻度が変わる
※この記事に掲載されている価格は、2026年までの相場を参考にしています。昨今の物価高騰に伴い、価格は随時変動する可能性がございます。最新の詳細な価格につきましては、必ず直接店舗までお問い合わせください。
犬走りにはどんな役割がある?

まず、犬走りがどのような役割を果たしているのかを整理します。目的を理解することで、ご自身の敷地に必要かどうかを判断しやすくなります。
泥はねから外壁を守る
雨が土の地面に当たると、水と一緒に土が跳ね上がります。跳ねた泥は外壁の下部に付着し、乾いて汚れとして残ります。
建物の外周を舗装しておくと、跳ね上がりの原因となる土がなくなります。特に明るい色の外壁では、下部だけが黒ずんで見えるのを防ぐ効果があります。
外壁の汚れは見た目だけの問題ではありません。汚れが付着したままだと、劣化の進行具合を判断しにくくなります。塗り替えの適切な時期を見極める意味でも、汚れにくい環境を整えておく価値があります。外壁の手入れの考え方は外壁塗装が本当に必要かを整理した記事で解説しています。
建物まわりを歩けるようにする
基礎、外壁、給湯機、エアコンの室外機。建物の外周には、点検したり手入れしたりする対象が並んでいます。
土のままだと、雨上がりには足元がぬかるみ、雑草が生えればその都度刈り取る手間が発生します。舗装されていれば、天候に関わらず建物の周囲をスムーズに移動できます。
基礎にひび割れがないか、外壁に浮きがないかといった確認は、近づいて見るのが確実です。歩ける状態にしておくことが、点検を続けやすくします。
床下の換気孔まわりを保つ
建築基準法施行令第22条は、最下階の居室の床が木造である場合について、外壁の床下部分に壁の長さ5メートル以下ごとに面積300平方センチメートル以上の換気孔を設け、ねずみの侵入を防ぐための設備をすることを定めています。同条は床の高さを直下の地面から床の上面まで45センチメートル以上とすることも定めています。
この換気孔の前が土のままだと、雨の跳ね返りで泥が入り込むことがあります。舗装しておけば、開口部のまわりを清潔に保ちやすくなります。
なお、同条にはただし書きがあり、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合などは、この規定によらなくてもよいとされています。基礎の工法によって扱いが変わる部分なので、自分の住宅がどれに当たるかは施工会社に確認してください。基礎まわりの考え方は基礎断熱と床断熱の違いを比較した記事も参考になります。
設置は義務ではない
建築基準法および同施行令において、犬走りの設置を義務付ける規定はありません。設けるかどうかは、敷地条件や予算に合わせて判断することになります。
そのため、必ずしも建物の全周に設ける必要はありません。道路側や、風雨が当たりやすい面だけに限定して設置することも可能です。
判断の基準となるのは、対象の面を土のままにした場合にどのような影響があるかです。次の章で、条件ごとに詳しく見ていきます。
犬走りはどんな場合で必要になる?
すべての敷地で犬走りが必要となるわけではありません。効果を発揮しやすい条件と、そうでない条件が存在します。
雨がかかる面
屋根の形状や軒の出の深さによって、外壁に雨がかかる量は異なります。軒が深く出ている面は、壁際の地面が濡れにくくなります。
逆に、軒の出が少ない面や、風向きによって雨が吹き付ける面は、地面が濡れて泥が跳ねやすくなります。図面の上で、どの面に雨が当たりやすいかを確認してください。
また、南面と北面では乾燥のしやすさも異なります。北側は日当たりが悪く乾燥に時間がかかるため、苔が発生しやすい傾向があります。設置の優先順位を検討する際は、日当たりや風通しも判断材料となります。
敷地に高低差があるとき
隣地や道路より敷地が低い場合、雨水が建物側に流れ込みやすくなります。この場合、単に舗装するだけでなく、適切な排水経路を設計することが不可欠です。
逆に敷地が高い場合でも、建物周辺にくぼみがあると水が溜まりやすくなります。地面の形状が水の流れを左右するため、外構全体の計画に合わせて検討する必要があります。
地盤の状態によっては、雨水が浸透しにくいこともあります。土質は地盤調査で分かるため、その結果も踏まえて相談してください。調査の内容は新築時に必要な地盤調査を解説した記事で扱っています。
隣地との距離が近いとき
隣家との間隔が狭い場所は、日当たりや風通しも悪くなりがちです。土のままだと湿気がこもり、乾きにくい状態が続いてしまいます。
また、狭い場所ほど、後から手を入れるのが難しくなります。建てたあとに機械が入らないような幅であれば、新築時に済ませておくほうが確実です。
通路幅の目安としては、点検時に人がスムーズに通れるかが基準となります。給湯機や室外機を設置するスペースでは、機器の前面で作業できるスペースが必要です。設備の配置計画と合わせて幅を決定しましょう。
後から設ける場合の確認事項
既存の住宅に後から犬走りを追加設置することも可能です。ただし、新築時とは検討すべき条件が異なります。
最も注意が必要なのは、地面のレベルを上げてしまわないことです。平成12年建設省告示第1347号は、べた基礎の立上り部分の高さについて、地上部分で30センチメートル以上とすることを定めています。舗装で地面が上がると、この地上部分が浅くなります。
また、床下換気孔の位置も確認が必要です。舗装の仕上がり面が換気孔に近すぎると、雨水が流入するリスクが高まります。既存の高さを測定したうえで、適切な仕上がり高さを決定することが大切です。
あわせて、給排水管や排水桝、エコキュートの基礎などの位置も事前確認が必要です。掘削範囲にこれらが存在する場合、工事内容に影響するため、現地調査を行ったうえで計画を進めましょう。
犬走りの素材ごとの違い

使用する素材によって、費用や見た目、手入れの頻度が異なります。重視するポイントに合わせて最適な素材を選びましょう。
コンクリート
犬走りで最も多く使われる素材です。表面が平らなので歩きやすく、掃き掃除もしやすくなります。雑草もほとんど生えません。
おおよその費用の目安は、1平方メートルあたり8,000円から15,000円程度とされています。ただし、これは一つの目安であり、公的な統計として定められたものではありません。掘削する深さ、残土の処分、型枠の量、現場までの搬入条件によって変わります。
気になる点としては、夏場に熱を持ちやすいこと、経年でひび割れが生じることがあります。ひび割れは、あらかじめ目地を入れておくことで、出る位置をある程度そろえられます。
砂利や砕石
敷くだけで済むため、コンクリートより手軽に施工できます。1平方メートルあたり3,000円から8,000円程度が目安とされていますが、これも公的に定められた金額ではありません。
水が地面に浸透するため、水たまりができにくいという性質があります。歩くと音が出るので、建物の周囲を人が通ったときに気づきやすくなります。
一方で、時間が経つと砂利が沈み、地面に混ざっていきます。落ち葉が入り込むと取り除きにくく、素足では歩きにくい面もあります。下に防草シートを敷いておくと、雑草と沈み込みの両方を抑えられます。
ブロックやタイル
インターロッキングブロックやタイルは、色や形を選べるため、外構全体の見た目を整えやすい素材です。工事費を含めた費用は、1平方メートルあたり9,000円から15,000円程度が目安とされています。製品によってはこれを上回ることもあります。
タイルの場合はコンクリートの下地の上に張るため、下地の施工費も加わります。仕上がりは美しくなりますが、その分の費用と工期は見込んでおいてください。
目地の部分は、時間が経つと欠けたり浮いたりします。点検のときは、この部分を見ておくと不具合に早く気づけます。外壁材との色の組み合わせも、外観の印象に効いてきます。外壁材の選び方は外壁のサイディングを解説した記事で扱っています。
透水性のある舗装
水が表面から地中へ抜ける構造の舗装もあります。水たまりができにくく、勾配を大きく取れない場所でも使いやすい素材です。
費用は通常の舗装より高くなる傾向があります。一方で、雨のあとに水が残りにくいため、掃除の手間は減ります。
ただし、隙間に土やほこりが詰まると水が抜けにくくなります。定期的に表面を清掃することが前提になる素材です。
| 素材 | 歩きやすさ | 雑草への強さ | 手入れの内容 | 費用の位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| コンクリート | 平らで歩きやすい | ほとんど生えない | ひび割れの確認と補修 | 中程度 |
| 砂利・砕石 | 足を取られやすい | 防草シートとの併用が前提 | 沈んだ分の補充 | 抑えやすい |
| ブロック・タイル | 平らで歩きやすい | 目地から生えることがある | 目地の欠けや浮きの確認 | 高め |
| 透水性のある舗装 | 平らで歩きやすい | ほとんど生えない | 目詰まりを防ぐ清掃 | 高め |
犬走りの施工で重要なポイントは?
犬走りは、単に設置するだけでなく、どのような施工を行うかが非常に重要です。適切な施工を行わないと、かえって逆効果になる場合もあります。
水を建物から遠ざける
犬走りの舗装の面は、建物側が高く、外側が低くなるように傾けます。逆になっていると、雨水が基礎に向かって流れます。
傾きの大きさは、水が流れる程度であれば足ります。一般的には1メートルにつき1センチメートルから2センチメートル程度の傾きをつけるとされています。これは施工の目安であり、法令で定められた数値ではありません。
傾きをつけるだけでなく、流れた先で水がどこへ行くかも決めておく必要があります。隣地側に流すことはできないため、敷地内の排水経路につなぐことになります。外構全体の排水計画の中で位置づけてください。
基礎と縁を切る
舗装を基礎に直接くっつけると、地盤が動いたときに両方が引っ張り合い、ひび割れが出やすくなります。少し離すか、間に緩衝材を入れておくのが一般的です。
この隙間があることで、それぞれが独立して動けるようになります。隙間には目地材を充填して、雨水や土が入り込まないようにします。
目地材は経年で劣化するため、いずれ打ち替えが必要になります。外壁の塗り替えと同じ時期にまとめると、足場や手間の重複を避けられます。
仕上がりの高さを決める
先にも触れましたが、仕上がり面の高さは基礎と換気孔の位置から決まります。建築基準法施行令第22条が床の高さを直下の地面から床の上面まで45センチメートル以上と定め、平成12年建設省告示第1347号がべた基礎の立上り部分の高さを地上部分で30センチメートル以上と定めています。
舗装で地面が上がると、これらの寸法が変わります。新築であれば設計の段階で織り込まれますが、後から追加する場合は現状を測ったうえで判断が必要です。
換気孔が塞がるような高さにしてしまうと、床下の通気が損なわれます。仕上がり面をどこにするかは、必ず事前に確認してください。
コンクリートを打つときの手順
コンクリートの場合、掘削、路盤の転圧、型枠の設置、打設、養生という順に進みます。それぞれの工程が仕上がりに影響します。
打設したあとは、固まるまでの間、水がかからないよう保護します。急に乾くと表面にひびが入るため、気温が高い時期には水をまいて乾燥を抑えることもあります。
養生の間は、上を歩いたり物を置いたりしないようにします。期間は気温や配合によって変わるため、いつから使えるかを施工会社に確認してください。
犬走りのメンテナンスはどうやって行うの?
設置後は、定期的に状態を確認しながらメンテナンスを行うことが大切です。チェックすべきポイントは限られています。
コンクリートのひび割れ
コンクリートは、経年でひび割れが生じます。幅の細いものは、ただちに問題になるわけではありません。
見ておきたいのは、幅が広がっていないか、段差が出ていないかという点です。段差が出ている場合は、地盤が動いている可能性があります。
細いひび割れは、補修材で埋めることで水の浸入を抑えられます。犬走りの中でも幅が広いものや、段差をともなうものは、原因を確かめてから対処する必要があります。施工会社に見てもらってください。
砂利の沈み込みと雑草
砂利は、歩いたり雨が降ったりするうちに土に沈んでいきます。厚みが減ってくると、下の土が見えて雑草が出てきます。
減った分を補充すれば元に戻ります。頻度は、歩く回数や雨の当たり方によって変わります。
防草シートを敷いてある場合は、継ぎ目から雑草が出ることがあります。敷くときに十分な重ね幅を取り、ピンで固定しておくと、この状態になりにくくなります。
水たまりができるとき
雨のあとに水が残る場合、傾きが足りていないか、途中がへこんでいます。どちらなのかは、水の溜まり方で見当がつきます。
一部だけであれば、その部分を削って調整する方法があります。全体に残るようなら、傾きの設定そのものを見直すことになります。
水が残る状態を放っておくと、その部分に苔が生え、滑りやすくなります。気づいた段階で相談してください。
手入れをまとめて考える
犬走りの手入れは、単独で考えるより、住まい全体の維持管理の中に置いたほうが無駄がありません。
外壁の塗り替え、目地の打ち替え、屋根の点検。これらの時期と合わせれば、足場や職人の手配をまとめられます。建物まわりの点検も、その機会に一緒に行えます。
住み始めてからかかる費用の全体像は戸建ての維持費を年間ベースで整理した記事にまとめています。犬走りもその一部として計画に入れておくと、突然の出費になりません。
ヤマダホームズでは、建物のご提案とあわせて、外構や敷地まわりの計画についてもご相談を承っております。実際の仕上がりをご覧いただけるモデルハウスを全国にご用意し、みなさまのご来場をお待ちしております。ご興味のある方は、以下のサイトから詳細をご確認ください。

よくある質問
- 犬走りは必ず設けなければならないのですか
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建築基準法とその施行令に、設置を義務づける規定はありません。設けるかどうかは、敷地の条件と予算で判断することになります。全周に設ける必要もなく、雨がかかりやすい面や点検のために通りたい面だけに設けるという選び方もできます。
- 犬走りの幅はどのくらい取ればよいですか
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幅を定めた基準はありません。判断の目安になるのは、点検のために人が通れるかどうかです。給湯機やエアコンの室外機を置く面では、機器の前に立って作業できる余地が必要になります。設備の配置と敷地の余裕を見ながら決めてください。
- 犬走りを後から追加する場合に気をつけることはありますか
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地面のレベルを上げすぎないことです。建築基準法施行令第22条は最下階の居室の床が木造である場合の床の高さを直下の地面から床の上面まで45センチメートル以上と定め、平成12年建設省告示第1347号はべた基礎の立上り部分の高さを地上部分で30センチメートル以上と定めています。舗装で地面が上がると、これらの寸法が変わります。床下の換気孔の位置も確認したうえで、仕上がり面の高さを決めてください。あわせて、給排水の配管や排水桝の位置も事前に調べる必要があります。
- 犬走りの素材はコンクリートと砂利はどちらがよいですか
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優先するものによって変わります。歩きやすさと手入れの少なさを取るならコンクリート、費用を抑えたいなら砂利です。砂利は水が地面に浸透するため水たまりができにくく、歩くと音が出るという性質もあります。一方で、沈んだ分を補充する必要があり、落ち葉が入り込むと取り除きにくくなります。
- コンクリートのひび割れは放置してもよいですか
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幅の細いものはただちに問題になるわけではありませんが、水が入ると内部から傷みが進みます。補修材で埋めておくと浸入を抑えられます。見ておきたいのは、幅が広がっていないか、段差が出ていないかという点です。段差をともなう場合は地盤が動いている可能性があるため、施工会社に見てもらってください。
- 雨のあとに水が残るのですが問題ありますか
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犬走りの傾きが足りていないか、途中がへこんでいる可能性があります。舗装の面は建物側が高く外側が低くなるように傾けるのが基本で、逆になっていると雨水が基礎に向かって流れます。一部だけに残るならその部分の調整、全体に残るなら傾きの設定を見直すことになります。水が残る状態が続くと苔が生えて滑りやすくなるため、気づいた段階で相談してください。
まとめ
犬走りは、建物の外壁に沿って設ける土間で、雨による泥はねから外壁を守り、建物まわりを歩きやすくする役割があります。設置は法律上の義務ではないため、雨のかかり方や敷地の高低差、隣地との距離などをふまえて、必要な場所を判断することが大切です。
素材によって費用や手入れの頻度が異なるほか、水を建物から遠ざける傾きや仕上がりの高さなど、施工時に押さえておきたいポイントもあります。設置後は住まい全体のメンテナンス計画に組み込みながら、長く快適に使える状態を保ちましょう。




