「高気密高断熱の家は快適」という言葉をよく見かける一方で、「住んでみたら思っていたのと違った」という声を見かけて不安になる方も少なくありません。気密性・断熱性を高めることは住宅の性能を上げる方向の工夫ですが、換気や設計の仕方によっては、暮らし方に影響が出ることもあります。
この記事では、高気密高断熱住宅の基本的な考え方とメリットを整理したうえで 、後悔の声として挙げられやすいデメリットと、その対策を住宅会社の実務目線で解説します。
- 高気密高断熱は断熱性能を示すUA値と気密性能を示すC値を高める考え方で、C値は現行の省エネ基準では数値基準がない
- 空気のこもり・過乾燥・音の響き・内部結露といった後悔の声は、気密性そのものではなく換気計画や施工の質との組み合わせで生じることが多い
- 建築費は坪単価で数万円から十数万円程度高くなる傾向がある
- 換気経路や気密測定(C値測定)の実施状況を打合せの段階で確認しておくと後悔を防ぎやすい
- 外気の影響を受けにくくなるため冷暖房の効きが安定し、部屋ごとの温度差も小さくなる
※この記事に掲載されている価格は、2026年までの相場を参考にしています。昨今の物価高騰に伴い、価格は随時変動する可能性がございます。最新の詳細な価格につきましては、必ず直接店舗までお問い合わせください。

高気密高断熱住宅とは
まずは「高気密」「高断熱」がそれぞれ何を指しているのか、基本的な考え方を押さえておきましょう。
気密性を表す「C値」と断熱性を表す「UA値」
断熱性能は「UA値(外皮平均熱貫流率)」という数値で表され、外壁や屋根、窓などから逃げる熱の量を外皮全体の面積で割って求めます。UA値は数値が小さいほど断熱性能が高いことを示し、国が定める建築物省エネ法の基準では、全国を8つの地域に分けて地域ごとの基準値が定められています。
気密性能は「C値(相当隙間面積)」という数値で表され、家全体の隙間の面積を延床面積で割って求めます。C値も数値が小さいほど気密性能が高いことを示しますが、現行の省エネ基準ではC値の数値基準は設けられていません。2009年の基準見直しで、それまであった気密性能の数値基準は削除されており、気密性能をどこまで求めるかは住宅会社ごとの方針に委ねられています。
それぞれの数値の詳しい基準や、高性能住宅全体の考え方については、高性能住宅の基準とメリット・デメリットで詳しく解説しています。
断熱等級やZEHとの関係
断熱性能は「断熱等級」という等級でも示され、2025年4月からは新築住宅にも断熱等級4以上・一次エネルギー消費量等級4以上を満たすことが義務付けられています。さらに高い性能を目指す場合の目安になるのが、経済産業省が定めるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準で、強化外皮基準として例えば東京を含む6地域ではUA値0.6以下が目安とされています。ZEHの詳しい基準や費用については、ZEH(ゼッチ)とは?ニアリーゼッチとの違いは?その費用も解説もあわせてご覧ください。
高気密高断熱住宅のメリット
UA値とC値を高めることは、住まいの中の熱と空気の動きをコントロールしやすくする工夫です。暮らしのどの場面で違いとして表れるのかを整理します。
冷暖房の効きが安定し、部屋ごとの温度差が小さくなる
断熱性能を高めると外壁や屋根、窓から逃げる熱が減り、気密性能を高めると隙間を通る空気の出入りが減ります。外気の影響を受けにくくなるぶん、冷暖房でつくった温度が保たれやすくなります。エアコンを止めたあとの温度の変化がゆるやかになり、廊下や洗面所のように冷暖房を効かせにくい場所との温度差も小さくなります。
冷暖房で使うエネルギーを抑えやすい
冷暖房の負荷が下がるぶん、同じ室温を保つために使うエネルギーは少なくて済みます。2025年4月から義務化された断熱等級4はその出発点にあたる水準で、ZEHの強化外皮基準はさらに上の性能を目指すための目安です。断熱等級を上げたときにかかる費用と光熱費の関係については、このあとの「建築費が上がる傾向がある」で国土交通省の試算をもとに紹介します。
計画した換気が設計どおりに働きやすい
気密性が低い住宅では、壁や窓まわりの隙間から入る空気が換気の一部を担っていました。隙間が少ない住宅では、給気口から入って各部屋を通り、排気口から出るという設計した経路のとおりに空気が流れやすくなります。給気口にフィルターを備えた方式であれば、外から取り込む空気をフィルターに通したうえで室内に入れられます。
外からの音が入りにくい
隙間が少ない住宅では、外の音が室内へ伝わる経路も減ります。交通量の多い道路沿いや線路の近くなど、音が気になりやすい立地では、暮らしやすさの差として表れやすい部分です。ただし室内で発生した音については、このあとのデメリットで触れるとおり、逆に響きやすくなる面もあります。
高気密高断熱住宅のデメリット

気密性・断熱性を高めることは、暮らしの快適さや省エネ性を高める工夫です。一方で、後悔の声として挙げられやすい点もあります。設計や換気計画によって対策できるものが多いため、何が原因になりやすいのかを知っておきましょう。
換気計画が不十分だと空気がこもりやすい
建築基準法では、シックハウス対策として2003年7月1日から、居室を有するすべての建築物に機械換気設備の設置が原則として義務付けられています。高気密な住宅ほど、この換気計画の質が室内の空気環境に直結します。気密性が低い住宅では隙間からの自然な空気の入れ替わりが換気を補っていましたが、気密性が高い住宅ではその分を計画された換気設備できちんと担う必要があります。
換気経路の設計や給気口の位置が住まい方に合っていないと、空気がこもりやすい部屋ができたり、冬場に空気が乾燥しやすくなったりすることがあります。これは気密性そのものの問題ではなく、換気計画と暮らし方の組み合わせで生じる問題です。
生活音や換気の音が響きやすい
気密性を高めると、室内の音が外に逃げにくくなる一方で、室内で発生した音が逃げ場を失って天井や壁に反響しやすくなると指摘されることがあります。ドアの開閉音や話し声、上下階の生活音が逃げ場を失い、鉄筋コンクリート造のマンションと同程度に響くと説明する解説記事もあります。間仕切りの配置や防音性が高い床材の採用、換気設備の機種選定によって、感じ方は変わります。
建築費が上がる傾向がある
気密性・断熱性を高めるには、断熱材や窓のグレードを上げ、気密工事の手間をかける必要があるため、その分だけ建築費は上がります。どれくらい上がるかについては、国土交通省が2018年に示した試算例が参考になります。6地域の120平方メートルの戸建住宅で断熱等性能等級を3から4に引き上げる場合、追加でかかる費用は1戸あたり約87万円(1平方メートルあたり約7,200円)、総建設費に占める割合は約4.0%と試算されています。あわせて光熱費は年間で約2.5万円下がり、追加費用を回収するまでの期間は約35年とされています。
この等級4は、2025年4月から義務化された省エネ基準にあたる水準です。高気密高断熱と呼ばれる住宅はさらに上の等級を目指すため、上乗せされる金額はこの試算より大きくなります。採用する断熱材や窓の種類、施工会社によっても変わりますので、正確な増額分は見積もりで確認してください。
内部結露のリスクがある
気密性を高めた住宅では、壁の中に湿気を含んだ空気が入り込むと、壁の中で結露が発生する「内部結露(壁体内結露)」のリスクが指摘されています。防湿材を正しい位置に施工し、外壁側に通気層を設けることで、湿気を壁の外へ逃がす対策がとられます。
高気密高断熱住宅で後悔しないためのポイント
ここまでのデメリットは、設計や換気計画の工夫で対策できるものがほとんどです。打合せの段階で確認しておきたいポイントを整理します。
換気システムの種類と経路を確認する
24時間換気には、給気・排気ともに機械で行う「第一種換気」と、給気は自然に任せ排気のみ機械で行う「第三種換気」などの方式があります。気密性が高い住宅ほど、計画した換気経路がそのとおりに機能しやすくなります。各部屋の給気口・排気口の位置と、空気がどう流れるのかを図面で確認しておくと、こもりやすい部屋を事前に見つけやすくなります。
気密測定(C値測定)を実施しているか確認する
気密性能は、施工後に気密測定を行うことでC値として数値化できます。数値基準が任意になっている分、建てる会社が気密測定を標準で行っているかは、気密性能への取り組み方を判断する材料になります。測定結果は保管しておくと、将来のメンテナンスや性能の確認にも役立ちます。
冷暖房計画とあわせて検討する
高気密・高断熱の住宅は外気温の影響を受けにくいため、全館空調と組み合わせた際の負荷を抑えやすいという特徴もあります。デメリットへの対策とあわせて、冷暖房の計画も担当者に相談しておくと、暮らし始めてからのギャップを減らせます。
断熱性能や気密性能は、図面の数値だけでは暮らしの感覚に結びつけにくい部分です。ヤマダホームズでは全国に住宅展示場をご用意しており、実際の建物をご覧いただきながら、断熱や換気の仕様について担当者にご相談いただけます。

よくある質問
- 高気密高断熱住宅は必ず息苦しくなりますか?
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気密性を高めたことそのものが息苦しさの原因になるわけではありません。計画された換気設備が適切に働いていれば、空気は入れ替わり続けます。息苦しさやこもりを感じる場合は、換気経路や給気口の位置、フィルターの汚れなどを確認してみてください。
- C値はどのくらいを目安にすればよいですか?
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現行の省エネ基準にC値の数値基準はなく、住宅会社によって考え方が異なります。気密性能を重視する住宅会社の目安としてC値1.0以下などの数値が示されることが多いため、検討している住宅会社がどの程度の気密性能を目指しているかを確認しておくと、比較しやすくなります。
- 内部結露は完全に防げますか?
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断熱材の選定や防湿材の施工、通気層の確保によってリスクを抑えることはできますが、完全にゼロにできると言い切れるものではありません。施工方法によって対策の考え方が異なりますので、採用する断熱材ごとの結露対策を担当者に確認しておくことをおすすめします。
- 建築費が高くなる分、後から回収できますか?
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断熱性能を高めると冷暖房費を抑えられる可能性がありますが、回収にかかる期間は建物の性能差や使い方によって変わります。初期費用の増加分をランニングコストの低下だけで判断せず、暮らしやすさや快適性もあわせて検討することをおすすめします。
まとめ
高気密高断熱住宅は、断熱性能を示すUA値と気密性能を示すC値を高めることで、快適性や省エネ性を高める考え方です。空気のこもりや過乾燥、音の響き、内部結露といった後悔の声は、気密性そのものの欠点というよりも、換気計画や施工の質との組み合わせで生じることが多く、設計段階での確認によって対策できます。
建築費は坪単価で数万円から十数万円程度高くなる傾向がありますが、換気経路や気密測定の実施状況を確認しておくことで、暮らし始めてからのギャップを減らせます。数値だけで判断せず、換気計画や結露対策の考え方まで含めて担当者に相談してみてください。




