家づくりの打ち合わせでは、間取りや設備の話が中心になり、防災対策は「あとで考えよう」と後回しになりがちです。しかし、備蓄品を保管する場所や家具が倒れない配置は、間取りが確定してから変更するのは容易ではありません。
この記事では、新築時に検討しておきたい防災対策を「土地の確認」「建物の性能」「間取り」「備蓄収納」の4つに整理して解説します。単なる防災グッズの紹介ではなく、設計段階で決めておくべきポイントに絞ってお伝えします。
- 防災対策は土地で想定される災害の確認から始まり、建設地によって優先順位が変わる
- 地震・風・雪への備えは、住宅性能表示制度の耐震等級・耐風等級・耐積雪等級として数値化できる
- 家具の転倒対策は、置き家具を減らす間取り設計や造作収納によって、入居前に講じることができる
- 飲料水は1人1日3リットルが目安で、大規模災害時には1週間分の備蓄が推奨されている
- 4人家族の1週間分の水は84リットルとなり、2リットルペットボトル換算で42本分の保管場所が必要になる
- 備蓄品は1箇所にまとめず使用場所の近くへ分散配置する方が取り出しやすく、管理も継続しやすい
土地で想定される災害を確かめる

同じ防災対策であっても、建築場所によって効果的な手法は異なります。土地が決定した段階で、その場所でどのような災害リスクがあるのかを把握しておきましょう。
ハザードマップで想定される災害を把握する
洪水、内水氾濫、土砂災害、高潮、津波、地震時の揺れやすさなどは、自治体や国が公開しているハザードマップで確認可能です。国土交通省の「重ねるハザードマップ」などを利用すると、住所を入力するだけで複数の災害リスクを重ねて表示できます。
浸水リスクのある土地では、基礎の高さを上げる、電気設備の設置位置を高くするる、駐車場の高さを調整するといった設計上の配慮が必要になります。土地の購入前、遅くとも間取りの設計に入る前に必ず確認してください。
避難場所と避難経路を先に決めておく
首相官邸の資料でも、防災マップやハザードマップを入手し、避難場所や避難経路をあらかじめ確認しておく重要性が示されています。地図上の確認だけでなく実際に現地を歩いてみることで、夜間に暗くなる道や、大雨時に冠水しやすい箇所などの具体的な課題が見えてきます。
避難経路が明確になると、玄関周りに備えるべき物も定まります。非常用持ち出し袋を玄関のシューズインクローゼットに配置するか、あるいは寝室に保管するかは、想定される災害と避難動線によって判断が分かれます。
建物の防災性能
建物自体の防災性能は、住宅性能表示制度の「等級」として客観的な数値で確認できます。打ち合わせの際は「丈夫な家にしたい」といった抽象的な要望ではなく、具体的な等級で伝えることで認識のズレを防げます。
地震への備えは耐震等級で示す
耐震等級は、建築基準法で定められた極めて稀に発生する地震力に対して、等級1は1.0倍、等級2は1.25倍、等級3は1.5倍の力に耐えうる(倒壊・崩壊しない)耐震性を表示する規格性です。なお、等級1が建築基準法と同等の最低限の基準となります。
建物の形状や重心のバランスも揺れにくさに大きく影響します。耐震等級と併せて検討してみてください。
風と雪への備えは耐風等級と耐積雪等級で示す
台風や強風への強さは耐風等級で評価します。耐風等級は、極めて稀に発生する暴風に対して等級2は1.2倍、等級1は1.0倍の力に対して倒壊・崩壊せず、稀に発生する暴風に対して損傷が生じない能力を検証する指標です。耐震等級とは異なり、耐風等級は2段階で設定されています。
積雪地域においては耐積雪等級の確認も不可欠です。
停電と断水に備える設備を検討する
災害時に問題となりやすいのが、建物自体が無事であっても電気や水道などのライフラインが停止するケースです。太陽光発電と蓄電池を組み合わせて導入しておけば、停電時でもある程度の電力供給を確保できます。
断水への備えとして、貯湯式の給湯器であればタンク内の湯水を生活用水(非常用取水口などから)として取り出せる製品が存在します。採用予定の機器にそうした機能があるか、具体的な取り出し手順はどうなっているかを引渡し時に確認しておきましょう。
間取りの防災ポイント

間取りは一度決定すると後から大きく変更することが難しい部分です。だからこそ、防災の視点は計画の初期段階から盛り込んでおく必要があります。
置く家具を減らして転倒の危険を小さくする
首相官邸のガイドラインでは、家具の倒壊を防ぐために壁面へ固定すること、寝室や子ども部屋には可能な限り家具を置かないこと、家具を配置する場合でも背の低い製品を選び、転倒時に出入口を塞がないよう向きや配置を工夫することが推奨されています。
新築住宅であれば、設計段階で「置き家具そのものを減らす」アプローチが可能です。壁面収納やファミリークローゼットを造作として組み込んでおくことで、固定が必要な家具自体を削減できます。
出入り口と通路をふさがない配置にする
「寝室から玄関までの避難動線上に倒れやすい家具を置かない」「廊下や階段に物が溢れないよう動線上に適切な収納スペースを確保する」という2点は、間取りの設計段階で手を打つことができます。
寝室については、ベッドの位置と窓や扉の位置関係の確認も重要です。夜間に大地震が発生した場面を想定し、暗闇の中でどのように移動するかを図面上でシミュレーションしてみると、置き家具の配置や照明スイッチの最適な位置が見えてきます。
防災の観点における備蓄収納のポイント
備蓄品は定位置を決めずに購入すると、廊下の隅や押入れの奥に積み上げられたままになりがちです。家族人数に応じた必要量から逆算して収納スペースを計画することで、無理なく管理を続けられます。
必要な量から収納の大きさを決める
首相官邸の指針では、飲料水の備蓄目安として1人1日3リットル・最低3日分が必要とされ、大規模災害に備える場合は1週間分の備蓄が推奨されています。農林水産省のガイドラインにおいても、人数分の食料・水を最低3日分〜1週間分備蓄することが望ましいとされています。
4人家族で1週間分の飲料水を確保する場合、必要な水の量は84リットルに達します。これは2リットルペットボトルで42本(6本入りケースで7箱分)に相当します。さらに非常食やカセットコンロ・ボンベ、簡易トイレ、衛生用品なども加わるため、一箇所にまとめて保管する場合は畳1枚分(約1.65㎡)程度の床面積を見込んでおく必要があります。
| 世帯人数 | 3日分 | 1週間分 | 1週間分を2リットルのペットボトルに換算 |
|---|---|---|---|
| 2人 | 18リットル | 42リットル | 21本 |
| 3人 | 27リットル | 63リットル | 32本 |
| 4人 | 36リットル | 84リットル | 42本 |
| 5人 | 45リットル | 105リットル | 53本 |
飲料水だけで相応のスペースを占有するため、「余った棚に収める」というアプローチでは収納しきれなくなります。家族人数と想定日数から必要な総量を事前に算出し、それを収められる収納棚をあらかじめ計画することが大切です。
1か所にまとめず分散して置く
すべての備蓄品を1箇所に集約してしまうと、災害時にその場所へアクセスできなくなった際に一切の物資が使えなくなるリスクがあります。また、重量のある水を遠くから運ぶ負担が大きくなると、定期的な入れ替えのハードルも上がります。
水や食料はキッチンのパントリーや床下収納、簡易トイレは各階のトイレ付近、非常用持ち出し袋は玄関や寝室といった形で、使用するシーンに近い場所に分散して配置するのが実践的です。ただし、簡易トイレは凝固剤を長持ちさせるために、湿気や高温を避けられるクローゼットや廊下収納などに収納捨ておくのがおすすめです。もしトイレや洗面所に収納する場合は、湿気防止として密閉ケースに入れてください。
入れ替えが続く場所に置く
備蓄食料は、普段から消費しながら買い足して常に一定量を保つ「ローリングストック」を取り入れることで賞味期限切れを防ぐことができます。この習慣を無理なく継続できるかどうかは、保管場所が生活動線上にあるかどうかにかかっています。
奥行きが深すぎる棚の奥や脚立が必要な高所などは、管理が行き届かなくなりがちです。日常の買い置きと同じ感覚で自然に出し入れできるアクセスの良さを基準に、収納の配置や奥行き寸法を決定しましょう。
必要な備蓄量や適した収納計画は、家族構成やライフスタイルによって異なります。ヤマダホームズでは、全国の住宅展示場で収納計画に関するご相談を承っています。備蓄したい品目のリストなどをお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。

よくある質問
- 備蓄品はどこに置くのがよいですか
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用途に応じて最適な場所に分散して配置するのが基本です。水や食料はキッチン周辺、簡易トイレは各階のトイレ付近、持ち出し袋は玄関や寝室に置くことで、非常時の移動距離を最小限に抑えられます。1箇所に集約するとその場所へアクセスできない場合に一切の物資が使えなくなってしまうため、分散配置を強く推奨します。ただし、簡易トイレの凝固剤は湿気や高温、直射日光に弱いため、湿気が発生しやすい場所や高温になりやすい場所は避けましょう。
- 床下収納は備蓄に向いていますか
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重量のある飲料水などを保管する場所としては、床面に近く出し入れの負担が少ないため適しています。ただし、床下は湿気がこもりやすい場合もあるため、食品を長期間保管する際は定期的に状態を確認しましょう。また、床下収納の開口部上に大型家具を配置すると開閉できなくなるため、設置場所を決める際は家具レイアウトも含めて検討することが重要です。
- 耐震等級3にすれば防災対策は十分ですか
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耐震等級は主に「地震力に対する建物の構造躯体の倒壊しにくさ」を示す指標です。建物自体が倒壊を免れても、ライフラインの遮断や家具の転倒事故は別途発生し得ます。また、水害や土砂災害に対する安全性を耐震等級で担保することはできません。そのため「建物の構造性能」「間取りと家具配置」「備蓄計画」「立地リスクの把握」をそれぞれ独立した対策としてバランスよく組み立てることが重要です。
- パントリーはどのくらいの広さがあれば備蓄できますか
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日常の食品在庫に加えて防災備蓄も収める場合、必要な物資の量から逆算して広さを決める必要があります。例えば4人家族の1週間分の水だけでも2リットルペットボトル42本となるため、棚1段分では収まりきりません。普段使いのストック用と非常用備蓄分を区別し、「非常用に何段分の棚スペースを確保するか」を設計担当者に相談することで、実用的な寸法・広さに落とし込むことができます。
- 防災対策で優先順位をつけるとしたら何からですか
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「後から変更や修正が難しいもの」から優先的に着手するのが原則です。「土地の災害リスク確認」「建物の構造・耐震等級」「間取りと収納スペースの位置決定」などは建築後に変更できない典型例です。一方で、備蓄品の中身や具体的なアイテムは入居後でも整えられます。そのため、設計段階においては立地特性の把握と適切な収納スペースの確保を最優先に進めてください。
まとめ
新築における防災対策は、建築地の災害リスクを把握することから始まります。ハザードマップで浸水深や土砂災害リスクを確認することで、基礎の高さ調整や設備配置といった具体的な設計上の判断が可能になります。また、建物の耐災性能については耐震等級・耐風等級・耐積雪等級などの定量的指標を用いて打ち合わせを進めることがポイントです。
間取りの検討では、置き家具を減らして転倒リスクを抑える工夫や、避難動線を塞がない家具レイアウトを入居前に計画しておくことが有効です。備蓄に関しては、1人1日3リットル・最大1週間分という基準をベースに家族構成に合わせた必要量を計算し、十分な収納容量をあらかじめ確保しておきましょう。備蓄品を一箇所に偏らせず、日常の生活動線上に分散配置することが、長続きする備蓄管理につながります。




