住宅会社が決まり、工事請負契約を結ぶ段階になると、分厚い契約書や約款、見積書、図面が一度に提示されます。契約当日にその場で内容をすべて確認するのは難しく、十分な理解がないまま説明を受けて署名してしまったという声も少なくありません。
この記事では、工事請負契約で法律上必ず記載されるべき項目を確認したうえで、契約前に押さえておきたい条項と確認の進め方を、チェックリスト形式で分かりやすく整理します。
- 建設業法では、請負契約の締結に際して16項目を書面に記載し、相互に交付することが定められている
- 工期の変更、設計変更、不可抗力による損害の負担についての定めも法定の記載事項に含まれる
- 引き渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について請負人が責任を負う
- この10年の規定に反する特約で注文者に不利なものは無効とされる
- 建設業者には、引き渡した新築住宅について保証金の供託か保険の加入による資力確保が義務付けられている
- 契約書は当日ではなく、事前に受け取って読む時間をつくる
契約書に書かれているはずの項目

工事請負契約の内容は、当事者が自由に取り決められる部分と、法律で記載が義務付けられている部分に分かれます。まずは法律で定められた項目から確認していきましょう。
建設業法が定める16の記載事項
建設業法では、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定められています。また同法では、当事者が対等な立場で合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実に履行しなければならないとも規定されています。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期および工事完成の時期
- 工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容
- 前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期および方法
- 設計変更や工事の中止の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更、損害の負担とその算定方法
- 天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担とその算定方法
- 価格等の変動または変更にもとづく工事内容の変更、請負代金の額の変更とその算定方法
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担
- 注文者が資材を提供し、または建設機械を貸与するときは、その内容と方法
- 注文者が完成を確認するための検査の時期と方法、引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払の時期と方法
- 契約の内容に適合しない場合の担保責任、またはその履行に関する保証保険契約の締結その他の措置の定めをするときは、その内容
- 履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
- その他国土交通省令で定める事項
契約書と約款を照らし合わせ、これらの項目がしっかりと盛り込まれているかを確認しましょう。記載がない項目がある場合は、記載を求める必要があります。
変更するときも書面が必要
同法では、請負契約の内容のうちこれらの事項に該当するものを変更する場合も、その変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。
着工後の仕様変更や追加工事はよくあることですが、口頭でのやり取りだけで進めてしまうと、後から金額や工期の認識に食い違いが生じる原因になります。変更のたびに適切に書面を交わす運用になっているか、契約前にあらかじめ確認しておきましょう。
とくに読んでおきたい条項
法定の記載事項の中でも、特に後々のトラブルに発展しやすいポイントを解説します。
工期の変更と遅延の扱い
完成予定時期がいつなのか、また工事が遅延した場合の対応について確認します。遅延利息や違約金に関する規定は法定の記載事項に含まれているため、必ず契約書や約款に明記されています。
併せて、天災などの不可抗力による工期変更や損害負担の規定も確認しておきましょう。近年は資材調達の遅延なども発生しやすいため、どのような事態が不可抗力として扱われるのかを把握しておくことが重要です。
あわせて、天災その他不可抗力による工期の変更と損害の負担についての定めも見てください。近年は資材の調達遅れも起こりますので、何が不可抗力にあたるとされているのかは読んでおく価値があります。
設計変更と追加費用の決め方
設計変更の申し出があった場合の工期や請負代金の変更、損害負担とその算定方法は法定の記載事項です。変更時の金額がどのような基準・方法で算出されるのかが明確に記載されているか確かめてください。
さらに、価格の変動等に基づく請負代金変更の条項も確認が必要です。契約後に資材価格が高騰した場合などに、どちらがどこまで費用を負担するかがここで決定されます。
検査と引き渡しの手順
注文者が完成状態を確認する検査の時期・方法や、引き渡しの時期も法定記載事項です。完成検査で不具合が見つかった場合の対応や、補修工事が完了するまで引き渡しを拒否できるかといった点を確認しておきましょう。
これらは支払い時期とも密接に関連します。完成後の請負代金の支払いが、検査や引き渡しなどのどのステップと連動しているのかを事前に読み合わせておくことで、当日の手続きをスムーズにイメージできます。
紛争が起きたときの解決方法
万が一契約に関するトラブルが発生した場合の解決方法も必須記載事項です。当事者間の話し合いで解決しない場合の相談先や解決手順が定められています。
建設工事の紛争については、専門機関である「建設工事紛争審査会」による解決手段が用意されています。契約書にどのように明記されているかを事前に確認しておくと安心です。
保証と保険の確認

契約書そのものの確認に加え、引き渡し後に適用される各種制度や保証の仕組みについても把握しておく必要があります。
10年間の瑕疵担保責任
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)では、新築住宅の請負契約において、引き渡しから10年間、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(欠陥)について、請負人が担保責任を負うことを義務付けています。
重要なポイントは、この規定に反して注文者に不利となるような特約を定めても、法律上無効とされる点です。仮に契約書にそれより短い期間が記載されていたとしても、該当箇所については10年間の責任が適用されます。
資力確保の措置
住宅瑕疵担保履行法に基づき、建設業者は毎年、基準日である3月31日からの3週間以内に、過去10年間に引き渡した新築住宅に対する責任履行のため、保証金の供託義務を負っています。なお、住宅瑕疵担保責任保険法人と保険契約を締結し、発注者に保険証券等を交付している住宅については、供託の対象から除外されます。
つまり事業者には、「供託」または「保険」のいずれかで資力を確保することが求められています。契約時にはどちらの措置が講じられているかを確認し、保険を利用する場合は保証金の支払いや証券の受け取りについて確認しましょう。
設備は10年の対象ではない
10年間の瑕疵担保責任が適用されるのは、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に限られます。給湯器や空調、キッチンなどの住宅設備は、この10年保証の対象外となります。
設備の保証範囲や期間は、メーカー保証や住宅会社が独自に設けるアフターサービス保証によって決定されます。どの設備にどのような保証が何年間つくのかを一覧で提出してもらい、契約書とは別に大切に保管しておきましょう。
契約前の進め方
確認すべき内容を理解できても、実際に熟読する時間がなければ意味がありません。スムーズに確認を進めるために、段取り面で意識したい3つのポイントを紹介します。
契約書は事前に受け取る
契約書・約款・見積書・図面などの書類は、契約日より前にコピーやデータを取得し、あらかじめ目を通しておきましょう。締結当日に初めて内容を確認するスケジュールでは、慎重に判断する時間が取れません。
もし事前の共有を断られた場合は、その理由を確認してください。一般的な約款であれば、事前に開示できない合理的な理由はありません。
見積書と図面を契約書に紐づける
工事内容は法定の記載事項ですが、契約書本文には「別紙参照」と簡略化されている場合があります。添付される別紙が、これまで打ち合わせてきた最新の図面や仕様書と正しく一致しているかを確認してください。
見積書の項目と図面内容にズレがあると、着工後に追加費用トラブルの原因となります。契約時点での確定図面と仕様書を契約書と一緒に大切に保管しておくことが、後々のトラブルを防ぐ重要根拠になります。
分からない条項はその場で聞く
契約書類には専門用語や複雑な条文が多く使われており、一度読んだだけでは理解しにくい部分もあります。あやふやな状態のまま署名・捺印をせず、分からない点は担当者に納得がいくまで確認しましょう。説明を受けた回答内容は、日付とともにメモなどの形で手元に残しておくと安心です。
契約内容に少しでも不安や疑問が残っている段階で無理に署名する必要はありません。ヤマダホームズでは、全国の住宅展示場にて契約締結までの具体的な進め方や注意点についても丁寧にご案内しています。

よくある質問
- 契約を結んだあとにキャンセルできますか
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契約書や約款には、契約解除(キャンセル)に関する詳細な規定が定められています。着工前か着工後か、またどちらの都合による解除かによって取扱いが異なり、違約金や実費精算が発生する場合があります。万が一のケースに備え、どのタイミングでどの程度の自己負担が発生するのかを事前に把握しておくことが大切です。
- 契約金はいつ、いくら払うのですか
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前金払や着工金、中間金などの定めがある場合、その支払時期と支払方法が契約書に明記されます。一般的には「契約時・着工時・上棟時・引き渡し時」などの工程に合わせて複数回に分割して支払う形式が多く採用されます。金額と時期が書面に正しく記載されているか確認し、住宅ローンの融資実行時期とズレがないかも併せてチェックしておきましょう。
- 工期が遅れたら補償されますか
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施工側の責務による履行遅滞(工期の遅れ)が発生した場合の遅延損害金や違約金については、法定記載事項として契約書や約款に明記されます。ただし、天災や不測の事態など「不可抗力」による遅延については免責条項が設けられているケースが多いため、どのような場合が不可抗力に該当するのかも併せて確認しておきましょう。
- 契約書は誰かに見てもらったほうがよいですか
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建築工事契約は金額が大きく専門的な要素も多いため、心配な場合は第三者の専門家へ相談することをおすすめします。建設工事紛争審査会のほか、消費生活センターや弁護士会の法律相談窓口などを活用するのも有効です。事前にスケジュールにゆとりを持って準備しておくことで、こうした外部相談もスムーズに行えます。
まとめ
工事請負契約では、建設業法に基づき16項目の法定記載事項を書面に明記して交付することが義務付けられています。単に金額や工事内容だけでなく、設計変更時の工期・費用の扱い、不可抗力時の損害負担、完成検査や引き渡しの手順、紛争解決方法まで幅広く網羅されているため、契約書と約款を併せてしっかりと確認しましょう。
また、引き渡し後10年間の構造・防水に関する瑕疵担保責任や、保証金供託・保険加入による資力確保措置が講じられているかも重要なチェックポイントです。設備保証はこれらとは別枠になるため、別途保証内容の一覧を確認しておきましょう。契約日当日に慌てないよう、事前に契約書類一式を受け取り、読み込む時間を確保しておいてください。



